Lenovo Voice vol. 5と追加インタビュー

Lenovo Voice vol. 5 表紙

vol. 5の「THE VOICE – ThinkPad開発の匠たち」のӠ#12486;ーマは、「筐体設計」。それを担っている「機構設計」部門が、ThinkPadの強靭な筐体を生み出すコアです。限界に挑んだ筐体設計について解説した、vol. 5の続きの話が聞きたくて、表紙の二人にインタビューしました。  

 

- Lenovo Voice vol. 5の発行から今までに、いろんな進展があったと思いますが?

大谷: そうですね。振り返ると結構いろんな事がありました。新しいチャレンジをした代表的な機種は、T420とT520/W520、そしてX1になります。T420とT520/W520のLCD側筐体パネルには新しいハイブリッドタイプですし、X1はゴリラガラスを採用しました。  

 

- 新しいハイブリッドタイプとは?

大谷: vol. 5でも解説したとおり、Zシリーズ以降は発泡材をサンドイッチした板材のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を採用しているのですが、T420とT520/W520は成型材になっています。成型材CFRPとGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を一体成型したハイブリッドで、業界初の試みだと思います。

溝口: 量産に使えるレベルに引き上げるには、1年ほどかかりました。違う素材を上手く成型時に接合しないとといけないのですが、苦労しました。

ハイブリッドなのはCFRPが導電体なので、アンテナのある部分はGFRPにする必要があるからです。しかし、CFRPとGFRPではプラスチックの収縮率が違います。一方の素材にソリが出たり、CFRPとGFRPの接合部の強度が保てなかったり・・・。量産化している板材のCFRPの扱いとは別物でした。いろんな工夫をして、この成型材のCFRPもなんとか量産に辿りつけました。

大谷: CFRPと総称されていますが、実はいろんなタイプがあります。Zシリーズ、X300やT400sにも採用したものは「軽く薄いが、コストは・・・」なものでしたが、今回のゴールは「マグネシウム合金より軽く、コストも有利」なものでした。各製品に最適なバランスの機構設計があるはずで、T420とT520/W520はその前の世代より、良いバランスになっていると思います。

ちなみに、T420sは「コストは・・・」のCFRPです(笑)。

 

- X1の新しいチャレンジとは?

溝口: X1のゴリラガラスは、それ自体でとても強度のあるものです。LCDのガラス面を保護するだけでなく、筐体全体の剛性を上げるのにも貢献しています。LCD側筐体パネルは、通常より少しだけ強度を落とした薄いマグネシウム合金ですが、ゴリラガラスと相まって充分な剛性を保っています。キーボード側は、X300やT400sと同じ剛性の高いキーボードベゼル一体型ThinkPad Roll Cageです。結果的には、ガラスが一枚増えているにも関わらず、必要な剛性保った上で最も薄い筐体設計ができたと思います。

 

- X1を使用してみて驚いたことがあります。キーボードの剛性が非常に高く、タッチフィーリングがとても良いんですね。トップクラスだと思っていたThinkPad 600を引っ張り出して比較したのですが、X1の方が断然良いと感じました。ここに実機が・・・。

大谷: (600とX1の実機をタイピングして)あ、本当だ。こんなに違うんですか・・・。600は名機だと思いますし、キーボードの評価もとても高かったですが、確かにX1では大きく進化していますね。

溝口: アイソレーション(アイランド)タイプのキーボードを採用したのが、剛性を高めた大きな理由です。キーとキーの間の一体型キーボードフレームと、アルミ底板のシャーシを接合して剛体にしているので、キーボード自体の剛性が上がったのが1点。そして、キーボードフレームの左右両端にフックをつけて、キーボードベゼル一体型ThinkPad Roll Cageと勘合させたのがもう1点。これら2点は予想以上に効きました。   

 

- なるほど。このキーボードはデザイン性がよく話題になりますが、それだけではなく、剛性やタッチフィーリングにも貢献するように、機構設計を仕組んだのですね?

大谷: その通りです。何か新しい事ができる時に、それを本当に価値ある事に昇華させる心がけこそが、「エンジニア魂」です。

 

- 最後に今後の展望を聞かせてください。

溝口: 新しいCFRPの開発に、日本の炭素繊維メーカーと取り組んでいます。ゴールは「アルミと同じくらい強い」です。もちろん薄さと軽さもアルミと同等かそれ以上という条件です。

先ほどの説明にあったように、CFRPにはいろんなタイプがあります。炭素繊維そのものにもグレードがあって、既に非常に強度の高いものが存在します。最もグレードの高い炭素繊維は釣竿に使われていて、航空機やF1カーの部品よりも良いものだそうです。しかし、ノートPCの量産には向きません。ほとんど工芸品のようなもので、何十万円という釣竿もありますが、当然コストとのバランスも考慮しなければなりません。まだ課題は多いのですが、近い将来実現できる自信があります。

大谷: ThinkPadの堅牢性は今まで通り追求していきますし、これからも柱となるものだと思います。しかし、「見栄えを含めた魅力」が、今後の製品にはより強く求められると思っています。X1やEdgeはそれ意識した製品ですが、まだ今後も機構設計として貢献できる部分が多いはずです。

例えば、今のCFRPは繊維が表面に不規則に浮き出てきてしまい、塗装をしないと製品として耐えられる見栄えにはなりません。塗装の重量もコストも省いた、見栄えの良いCFRPが開発できたら素晴らしいと思います。

溝口: 他の分野でチャレンジしたいのが、「キーボードベゼルの防滴性向上」です。キーボードの防滴性は業界一だと思うのですが、キーボードベゼルの隙間から液体が入ると、マザーボードまで到達してしまうのが現状です。いつもキーボードだけに液体をこぼすとは限りませんから。

 

- これからも「エンジニア魂」に期待しています。ありがとうございました。

Lenovo Voice vol. 5のフルバージョンや他のカタログなどはこちらです。「THE VOICE – ThinkPad開発の匠たち 筐体設計の最前線で、軽量と合成の限界に挑む。」を英語化してお届けします。

 

LenoVoice_Vol5e.pdf

Lenovo Voice vol.5